もう、10年前ぐらいの話し。
当時、私は有料老人ホームの管理者・相談員をしており、入居の相談業務をして居りました。
入居の問い合わせがあり、東京のとある病院に入院中の御本人様の様子を見に行きました。
病室に入り、ご挨拶をさせて頂きました。とても立派な男性。(Hさん)
私が訪問するなり、「何だお前は?、、、何しに来た、、、」と・・・・
今振り返れば、最初の印象はとても怖かった!! 笑
娘様も、Hさんに対して「「なんでそれが出来ないの!!」「昔は出来てたでしょ!!!」 と、なかなか今の現実を受け入れられない様子で、何だか異様な空気。。
娘様から、色々とHさんのお話しを聞いたら、昔は警察官で、麻薬捜査に関わってたとのこと。
当時の「お父さん」は娘様からすると、自慢の父親だったのでしょうね。
だから・・・ あーやってちょっと強い口調になっちゃうのかな・・・・今の父親を受け入れられないのかな・・・・
その日はあまり長い時間お話しせず、帰宅。
それから、1週間後、またHさんの入院先へ。
また、「何しに来たんだ!!」とHさん・・・・
入居の話しをストレートに伝えても、断られるのは百も承知。なので、昔のお仕事のお話しを聞き出しました。
最初は、黙ったままだったHさん、段々と警察時代のお話しをしてくれるようになりました。
張り込みしていた時の苦労話し。
怖い事務所に家宅捜査に入った話し。
警察あるある話し。
段々と、昔を思い出しながら話していたHさんの顔が何だかとても輝いていた顔を思い出します。
それから、無事病院を退院し、入居して頂きました。
Hさんからするとまた新たなスタート! しかし、本当は自宅でゆっくり暮らしたいはず・・・・
やはり、最初に出会ったときのように、他のスタッフにはなかなか心開かず・・・・私にも、「また、なんだお前は!!」・・・
また、一から振り出しに戻ってしまいました・・・・
必要以上に、お部屋から出で来ない・・・ ご飯の時以外はお部屋・・・・
あまり、無理に外に出てもらうより、私が頻繁にお部屋に行こうと考え、次の日からは毎日のように朝のご挨拶を行きがてら、15分ぐらいHさんの隣に座って色々とお話しをしました。最初は「また来たのかよ!!」「早く帰れよ!!」「仕事サボってなよ!!」まぁ、ボロクソ言われた思い出が・・・ 笑
ある日、いつものようにお部屋を訪問し、お話しをしてると、左腕に高そうな時計が~ (^o^)
「私も時計大好きなんですよ~」と話すと、この時計は警察時代に買ったものと、また昔を思い出しながら、生き生きと時計のお話ししてくれました。 しかも、オメガの時計!! 笑
次の日に私の時計を見せに行ったりと少しずつコミュニケーションがとれてきて、最初に出会った時とは別人のように色々な話しをしてくれたり、時には私の事を「休んでのか?・・・」「あまり無理すんなよ・・・」と気にかけてくれたり・・・
私の時計を見せたら、鼻で笑われました・・・ 「こんな安いものかっこ悪い・・・」
男なら、カッコイイ立派な時計をしろ!! と・・・・
などなど、少しずつですが、たくさんコミュニケーションをとった思い出があります。
入居して2年ぐらい経ち、Hさんが肺炎で入院してしまいました・・・
私も時間がある時はHさんの御見舞に行き、いつものようにお話しをして・・・・
なかなか時間が取れず、御見舞に行けない日が続き、久しぶりに御見舞に行くと、段々と弱っていくHさん・・・
時計の話しをしたり、昔の仕事の話し、私の悩み・・・
しかし、いつもとは違く、元気がない様子・・・
それから、数日後体調が悪化・・・ 御見舞に行くと、酸素マスクをし、目も開けず・・・・ 声かけにも反応なく・・・
娘様が「大好きな高橋さんが来てくれたよーーーほら、目を開けて、お父さん!!」・・・・ なんかその場にいるのが辛くなった記憶があります・・・
それから何週間・・・ Hさんは旅立ってしまいました・・・・
葬儀に参列させてもらい、娘様が号泣をしている姿を見るのが、とても辛かった・・・・
娘様が、最後の挨拶で、「あんなに頑固でプライドの高い父が、ホームに入居して、スタッフの優しい声かけ、心遣いで以前の様に輝いていた父に少しだけでも戻ったように思いました。最初は娘としてもホームに入れること自体も抵抗があったが・・・
今は、後悔もなく、逆に感謝の気持ちでいっぱいです! ありがとうございました。」
私も自然と涙が沢山でてきました・・・・
それから数週間後、Hさんの御家族様がご挨拶とお部屋の片付けに来て頂き、娘様が、「生前、父がこの時計を高橋さんにいつかあげるんだと話してたと・・・ なので、私が形見に持っているより、高橋さんが持っていてもらったほうが父は喜ぶと思いますのでと、Hさんがいつもつけていた大切な時計を頂きました。
Hさんが娘様にそんな事を言ってくれてたなんて・・・
Hさんとたくさんお話ししてきたこと、Hさんとのやり取り・・・ 娘様の前で恥ずかしながら、泣いてしまったのを思い出します・・・
今では動きませんが、大切に大切に保管して居ります。
私の中ではHさんとの関わりが、とても色々な事を考えさせられたり、勉強になりました。
そして、Hさんと過ごした日々がとても良い思い出です。
このブログを読んで頂いた介護の仕事をしてる方々・・・へ
我々の関わり方一つで、もしかしたらその方を再び輝かせる事が出来るかもしれない
生きる希望、頑張るぞ!という思いに火をつけれるかもしれない
そんな可能性が隠されている仕事に私は誇りとやりがいを持っています。勿論、お別れすることはとても淋しい・・・しかし、そのお別れまでの過程の中で、自分が関わることが出来、少しでもその方の人生に役にたてば嬉しいですね。
いつもと同じ日はないんです! いつも安定した感情、気持ちはないんです!! 歳を重ねても、皆同じ。嫌なものは嫌だ。嬉しい事は嬉しい。一人一人に寄り添い、相手の気持ちを考え、少しでも最期までの過程で、自分が役にたったり、必要とされたりしたら嬉しいですね!
そんな思いを持ちながらこの仕事を続けています。今でもこれでいいのかな?相手はどう思うのかな?と、反省の毎日です・・・
日々勉強!!
これからも頑張ります!!!
株式会社ユーティー代表取締役の高橋由欧です。21歳で横須賀にある介護老人保健施設で7年間勤務、その後、民間企業にてグループホームの管理者、委託業務として介護現場のコンサルタント業、初任者研修講師業、有料老人ホームの管理者、介護支援専門員を経て、金沢区でデイサービスサニーテラス、SPAリゾート、鎌倉市長谷で介護に特化したハセノ島Hotelコテージ(宿泊)を運営。インスタグラムはこちら→https://www.instagram.com/yuu_takahashi0604/